最弱暴走族と桜【完】SS更新中!
尚人Side
「――…って感じでした」
『……ああ、うん、分かった。ありがとう』
「いえ」
絶対桃李は、何で俺から桜姉を奪うんだ的な事を考えていると思う。
桜さんもきっと分かってるな、これは。
説明したからじゃあなくて、姉弟だから。
そんな風な様子だ。
『……』
「桜さん?」
『…以前、桃李と、な。会ったの、五年前なんだ』
少し悲しげに話す桜さん。
『姉らしいこと全然出来ないなーって思って』
桜さんの言葉で桃李があんなにも桜さんに依存している理由が分かった。
寂しいんだ。
ただそれだけ。
自分の姉なのに側に居てくれない。
自分の側に帰って来てくれても直ぐに何処かに行ってしまう。
俺も同じだ。
「……餓鬼…」
『ん?』
「いや、俺も桃李もまだまだ餓鬼だなあって思ったんです」
考えがまだ足りなくて、考えている事自体が餓鬼っぽくて、
それじゃあ考えている意味が無い。
『ふふ。……そうだな。みんな、まだまだガキだ。あたしも』
「桜さんも…?」
『だからまだバカな事が出来るんだよ』
「?」
意味が分からずに首を傾げると桜さんは子供の様に笑った。
『〝子供は何をするか分からない〟でしょ?』
「……?はい」
『だから子供は無限の可能性を持っている。あたしもまだまだガキなら、それなりの可能性があるんだよ。勿論、みんなもね』
「……良く、分かりません」
可能性。
確かに子供には可能性がある。だから?
『簡単に言うと、桃李が無理にでも此処に来る可能性があるって事!』
「は?」
俺が気の抜けた声を出すと同時に、桜さんの病室のドアが勢い良く開いた。
「はぁっはぁっ…!」
「「ね、姐さんっ」」
「…凄い可能性ですね」
『でしょ?』
綱牙のメンバーをニ、三人、腰に引き摺ったまま来たのか。
ぜぇぜぇと肩で息をしながら部屋に入ってくる桃李。