俺がサンタで君がトナカイ【BL】
あー、早くクリスマス終わんねえかな。
さっさと次、行こうぜ。
いまだに抱き合ったままの恋人たちの横を通り過ぎていく。
そこでふと、近くに仲間のサンタの姿を発見した。
俺よりも少し、年下だろうか。
多分、見習い同等の新米サンタだ。
向こうは、こちらも何か問題があったのか
店員の恋人についていたらしく、
同じく俺たちに気が付くと、親指を立ててウインクしてきた。
どうやら初仕事らしく、
浮かれる彼をトナカイがおさめている。
どうやら向こうのトナカイも、
サンタより年上らしく、自分は経験があるようだ。少し落ち着いている。
だけどトナカイも、相棒の初仕事成功を喜んでいる。もう、遠目で分かる位に。
……仕方がないから俺もGJし返した。
ウインクはしない。
愛想笑いだけだ。
そんな俺に、トナカイが言う。
「親指が下向かない内に、次行こうか」
解ってるじゃないか。さすが俺のトナカイ。
車は少しスピードを上げ、
10秒数えた辺り、ギリギリで向こうから見えなくなった距離で、俺は手首を返していた。
どうしてもイラつきが消えなかったんだ。
いちゃつくバカップルと、
あと、浮かれすぎな新米君に。
アイツもサンタ力が上がらなくて悩みやがれ。
効く訳無いけど念を送りながら、体をシートに沈めた。
さて、次は何だ?