俺がサンタで君がトナカイ【BL】
が、何故かロッジに明かりが灯っていない。
寝ちゃったかな、と見送る際に青年は言った。
一応、見届けなければいけないから、
車のライトは消して、
トナカイ力でさらに目立たない感じにして、様子を伺う。
俺もトナカイも、耳がいい。
いつも物凄く聞こえる訳じゃ無いけれど、
意識を耳に集中させれば、遠くの音も聞き取れる。
どちらかと言えば、サンタである俺の方が聴力は上だ。
子どもが本当に寝ているか確かめる必要があるから。
青年が小さく、恋人の名を呼ぶ声が聞こえた。
続いて、応える声も。
布の擦れる音と、
起こしてゴメンと謝る声から、
そこは寝室なのだという事が窺える。
しかし恋人の声は、寝起きと言うには滑らかで耳通りの良い音をしている。
そして、点けられるかと思った電気は、
一向に点く気配は無く、
衣擦れと呼吸音だけが聞こえてくる。