俺がサンタで君がトナカイ【BL】
頼むから、クリスマスは家族や友人たちと過ごす日にして欲しい。
それがここ数年の俺の願いだ。
恋人と過ごすという事を止めて欲しい。
別に今日明日じゃなくたって、バレンタインだってあるし?
だから勘弁してくれよ、ほんと。
そこ行くカップル、狭い道では横に並んでいちゃつきながら歩くんじゃねえ。
ケーキ持ったおっさんが早く帰りたいのに追い越せなくて困ってるだろうが。
ムカついて視線を逸らせば、
隣の車線の乗用車が目についた。
……正確に言えば、中の2人が。
いくら信号待ちで停まっているからって、キスとかしてんじゃねえよ。
あー、あー、しかも何か長いし。
危ないだろ。
いっそクラクション鳴らしてやろうかこの野郎。
思うままに運転席に手を伸ばすと、
途中でトナカイに掴まれ止められた。
「何、羨ましいの?しょうがないな」
そう言って掴んだ腕を引き寄せられる。
「違うっつの、アホか」
近づいて来る顔をどうにか遮り八つ当たる。
どうせもうすぐ信号変わるし。
そう思った途端、光るのは黄色に移り変わった。
拒否られてすぐに戻ったトナカイは、
無事に信号に合わせて発進させる。
隣の車は……出遅れて後ろにクラクションを鳴らされていた。ざまーみろ。