俺がサンタで君がトナカイ【BL】
ケーキ屋の店長は既に帰宅済み。
息子に売り子をまかせ、彼には売り切るまで帰るなと言いつけているそうだ。そんな無茶な。
調べによると、店長夫婦は息子の恋人をよろしく思っていない。
だから無茶振りをして、邪魔をしているそうだ。
会おうと思えば、いくらでもどうにでも出来そうなものなのに、息子は生真面目らしい。
俺だったら放棄して会いに行くのに。
きっと小さい頃から良い子だったんだろう。
だからそんな彼らを手助けするのが、俺たちの仕事。
サンタの格好のケーキ屋に、
同じ格好で買いに行くのはなんだかな、と
ちょっと躊躇いがあるので、トナカイが買い物担当だ。
赤いダウンを羽織って、車を降りた。
「いらっしゃいませー!」
夜に近づくにつれ売れ行きが落ちていっているのか、近づくと店員は目一杯の笑顔で迎えていた。
「ケーキください、あるだけ全部」
こちらも笑顔でトナカイが言うと、
店員は何の冗談かと、真に受けない。