夕焼け色に染まる頃
そういえば、こんな場面を時代劇とかで見たことがあるかもしれない。
あぁ、本当に、本当にタイムスリップなんてあったんだ。
思わずしてその立派な家……と言うより豪邸になるんだろうか、その門を見て息を呑んでいれば高杉さんが「オイ!」っと私を読んだ。
それも繋いだ手をぶんっと振りながら。
「ひゃっ!なん、なんですか、驚いた……!」
「何を言う、俺はさっきからお前を呼んでいた、なのに気付かないお前が悪い」
言葉では私を叱っているようなのに、それとは裏腹に高杉さんはへらへら笑っている。
そして唇につぃと弧を描けば目を細めつつくつりと妖艶に笑んだ。
「いいか、女。……俺はお前が気に入った、だが下手すれば終わりだ」
「………え?」
その言葉の意味がわからず首を傾げようとすれば、ぐいと繋ぐ手が引かれて重心をずらしてしまう。
驚きに目を見開けば、その間にも私は高杉さんの腕の中にいた。
そして高杉さんは、私の耳元でごにょりと一言呟く。
「……健闘を祈ろう、女」
ポン、とあやすように肩を叩かれて。
解放された私の心臓は、気恥ずかしさと緊張と恐怖と不安で早鐘のように鳴っていた。