夕焼け色に染まる頃
この辺りから、私の無意味な戦いは始まっていた。
人はこれを、一人相撲と言う。
上手い言葉もあったもんだ。
コホン、吸っていた息を溜めていたら咳が出た。
「……エッチ」
「………………は」
「ど、どこ、見てるんですかぁ」
「……………………………は」
自滅しました、誰か私を墓穴に入れて下さい。
高杉さんの怪訝そうな顔をみて、私の頬はひきつった。
「嘘です。是非、私を説教なさってください、それはもうじゃんじゃんと」
「えっち、ってなんだ」
「いや、お願いですから、そこ突っ込まないで下さい。恥ずかしくて悶絶しそうです」
「は、はぁ……」
訝しげに私を見る高杉さんの視線があまりに痛くて、私は俯いた。
「……まぁ、いい。今はお前の説教だな、説教」
「お手柔らかに……あの、おにぎりでも如何ですか」
「おお、いただこう」
私の手からおにぎりを取る。
高杉さんは、何かを考えるように一瞬目を伏せた。
「漫才をしてる場合じゃないだろう、高杉君。君は重大な役割を任せられているよ――……まさに今、だ」
そんな高杉さんの様子に、いつの間にか私の後ろにたった伊藤さんは気付いたのだろうか。