夕焼け色に染まる頃
別にきつい言葉を放っている訳ではない。
けれども、なんとも言いがたい威圧感があった。
知らず知らずのうちに背筋が伸びる。
高杉さんが一つ頷いて、私を見据えた。
「挙兵……戦い、つまり戦、だ」
そう、それくらいわかってる。
「この挙兵に、何人くらいの人々が集っているか知っているか?」
「確か、80人くらいだったと聞き及んでいますが」
「そうだ」
伊藤さん、石川さんの率いる隊。
そして、高杉さんは途中で奇兵隊も加わってくれると信じている。
と言うのも、高杉さんは奇兵隊の皆さんにクーデターへの賛成をすぐには得られなかったようだ。
本来ならば賛成を得て、初めから加わって貰うのか妥当なところ、時間が間に合わなかったんだ。
「だからこそ――……」
ゆっくりと瞬きする高杉さん。
ぐ、と目と目の距離が縮まった気がした。
「相手の出方を見定めなけりゃいけねぇ。そんで、此方の犠牲はそうだしちゃいけねぇんだ。いや、血なんて流しちゃいけない」
"流したくない"。
そう、小さく願望を告げた高杉さんは眉を寄せる。
「だから」
なんで。
「俺は、……」
こんなに、辛そうな、悲しそうな目で、私を見るんだろう。