夕焼け色に染まる頃
私は、自分のおかれた状況がどんなものかわからないくらい馬鹿じゃないし、むしろわかってる。
それは勿論、タイムスリップしちゃったって事を言いたいんじゃなくて、立場的な意味で、だ。
高杉さんが言うように、こんな少人数で挙兵だなんて無茶がすぎる。
それがいくら夜で、電気という明かりのない闇のなかでの討ち入りだとしても。
いや、むしろそれじゃあ有利にはならない。
この時代は不便だ。
闇は敵も味方も呑み込んで、結局は有利不利なんて関係ないんだから。
どこから刃が向かってくるかわからない。
危ない。
そんな場所に、私は――……無力な私は、ついて行くんだから。
「あの、綺麗な着物は」
何かを私に告げようとした、高杉さん。
きっとその言葉は、誰よりも高杉さん自信を傷付ける。
だからこそ私は、その言葉を遮った。
「私が着れば、武器になるのですか?高杉さんのお役にたてますか」
ぎゅうと、高杉さんが膝あたりの着物を握った。
圧迫し過ぎて、拳が白くなってる。
「高杉さん」
そっと、白い拳に手を重ねた。
その手は冷たい。
「わかりましたよ、着ます、って。だからちょっと出発待っててください。なんせ私、まだ上手く着物が着れなくて」
へらりと笑いながら、そう言った。