夕焼け色に染まる頃
高杉さんの拳がふっと緩む。
それを感じた瞬間、重ねていた手が強くひかれて、高杉さんの胸に額をぶつけた。
「高杉さん……?」
高杉さんの表情を見ようとして、ぐいと見上げた。
けれども私の頭は高杉さんの手によってきつく抱き締められていて、なかなかそれが出来ない。
「お前は今、どこまで考えた。きっとお前は、俺の汚い心までお見通しなんだろう」
「そんな、」
こと、ないですよ。
人は皆、そういう心を持っているのだと私は知っています。
でも、高杉さん、あなたはきっと。
「すまない。俺がお前を――……利用するってのに……!言えなかった、躊躇っちまった…っ!……俺は、……情けないな……」
それは、リーダーとして、なのだろうか。
「そんなこと、ありませんよ」
高杉さんの鼓動が聞こえた。
それがあまりにも心地好くて、私の声は自然と優しいものとなっていた。
「高杉さん、皆の為です。皆の為に、無力の私を使う事が出来る高杉さんは、すごいと思うんです。個人個人の長所を見極めて、立場を作ってくれる高杉さんは、すごい人」
さりげなく、高杉さんの背中に回した手で、トンと一つ叩いた。
それを合図にするかのように、するりと高杉さんは私から離れる。