夕焼け色に染まる頃
「話は終わったかい?」
「はい。……って、え?」
目線の先では高杉さんが隊士の方と談笑していて、とても楽しそう。
思わず顔を綻ばせていれば、背後から伊藤さんの声が聞こえた。
「おや、そんなに驚かなくていいんじゃないかね?」
まるで心外だ、とでも言うように肩をすくめた伊藤さんは、薄く笑みを浮かべている。
「いつからいらっしゃったんですか、伊藤さん。全然気付かなかったです」
「んん、最初っからいたはずなんだけどな」
「え、でも」
高杉さんが一度、伊藤さんを探して辺りを見回したはず。
なのに気付かなかったってことは、こんな近くにいたはずがないじゃない。
そう言おうとすれば、ポンと伊藤さんは手を叩いた。
それにつられて、つい言葉を止める。
「あ、一回離れたけどね。少し用事があったんだよ……うん、君が着替える部屋の準備と女中の手配をね。君はまだ、一人で着替える事が出来ないのだろう?」
「……はい」
「そら、やっぱりね」
「なんで分かったんですか?」
にこりと、意味ありげに伊藤さんは笑う。
「すまないがね、君達の話し声が聞こえてしまってね……」
対して私は、少し眉間にシワがよっていただろうか。