夕焼け色に染まる頃


「君の隣には常に、素直代表がいるものでねぇ……君がいかに感情を隠して、いかに我慢をしているのかが良く分かる」


「素直……代表?」


チラリと、伊藤さんの目線が動いた。

その先には、さっきまで私が見ていた高杉さんが、やはりまだ隊士の方と談笑している。


「高杉さんの事ですか?」


「彼は素直だよ、とてもね。そんな彼が近くにいるんだ、良いお手本になるだろう?高杉君を見習ってもう少し素直になりなさい」


「……はい」


少し、照れくさくなった。

頭の上をポンポンと弾む伊藤さんの手がとても暖かくて、お父さんを連想させる。

けれども、胸がチクリと痛む。

その痛みの理由を私はわかっているのに、それすら高杉さんには言えていないんだ。


あぁ、こういうことかもしれない。

私は、素直に胸の内を曝してしまうのが、まだ怖いんだろうな。


「――……けれどもね、朔君」


ス、と伊藤さんの手が髪を透いた。

つられるように伊藤さんを見上げる。

伊藤さん自身は、まだ高杉さんを見たままだった。


「高杉君も君を見習うべき所はあるんだ」


「え?」


高杉が、私なんかを見習うって?

ついつい聞き返した私の声は、変に裏返った。


< 109 / 189 >

この作品をシェア

pagetop