夕焼け色に染まる頃
「君の隣には常に、素直代表がいるものでねぇ……君がいかに感情を隠して、いかに我慢をしているのかが良く分かる」
「素直……代表?」
チラリと、伊藤さんの目線が動いた。
その先には、さっきまで私が見ていた高杉さんが、やはりまだ隊士の方と談笑している。
「高杉さんの事ですか?」
「彼は素直だよ、とてもね。そんな彼が近くにいるんだ、良いお手本になるだろう?高杉君を見習ってもう少し素直になりなさい」
「……はい」
少し、照れくさくなった。
頭の上をポンポンと弾む伊藤さんの手がとても暖かくて、お父さんを連想させる。
けれども、胸がチクリと痛む。
その痛みの理由を私はわかっているのに、それすら高杉さんには言えていないんだ。
あぁ、こういうことかもしれない。
私は、素直に胸の内を曝してしまうのが、まだ怖いんだろうな。
「――……けれどもね、朔君」
ス、と伊藤さんの手が髪を透いた。
つられるように伊藤さんを見上げる。
伊藤さん自身は、まだ高杉さんを見たままだった。
「高杉君も君を見習うべき所はあるんだ」
「え?」
高杉が、私なんかを見習うって?
ついつい聞き返した私の声は、変に裏返った。