夕焼け色に染まる頃
「二度は言うまい。命が惜しくはないか?それとも生首となりたいか。……のぅ、そなたには愛する家族とやらがいるのでは……ない……のか?」
あれ……どうしてだろう。
ツキンと心臓の辺りが痛んだように感じた。
「た、だだいま……!」
焦ったように踵を返した門番は、完全に開けきっていない門をギィ…と開く。
どうやら第一関門は突破したようだった。
「おい、朔」
小さな声で、高杉さんが声をかけてくる。
「大丈夫か」
どうやら、私の小さな異変に気付いていたようだった。
だめだな、この人には叶わない。
「大丈夫、頑張れる。このくらいどってことないないよ」
そう、前を見据えたまま囁けば、それはしっかりと高杉さんに届いてくれていたようだ。
「なら、いい。あんま無理すんなよ」
こくりと頷く。
今、目の前には大きな屋敷が映っていた。
あれが、長州藩。
今から、戦いを仕掛ける所――……。
空はとっくに暗くなっていて、煌々と燃える松明だけが視界を照らしてくれていた。
ゆっくりと馬が前進しだす。
『そうして上手く扉があいたら――……後ろに隠れる伊藤達にでっけえ声で合図を出してやれ!!』
頭の中で高杉さんの声が響いた。