夕焼け色に染まる頃


「いまだ……っ!かかれー!」


私の声が闇夜に響く。

ど、っと足音が後ろから聞こえた。

それが伊藤さん率いる力士隊と、途中から合流した奇兵隊の人達だと気付くのにそう時間はいらない。


先人を切って、伊藤さんが私の乗る馬の横をすり抜けて中へと斬り込んでいった。

それに続いて、人、人、人の波。


「――……っあ!」


ぐらりと馬の体が傾き、落ちる!と思った時だった。


「朔!こっちこい、行くぞ!」


馬の背中からするりと私を下ろし、幾重にも重ねられて重く煌びやかな着物の上数枚を脱がして馬の上におく。

そこまでの流れが余りにもはやくて、なれてるなぁ……なんて頭の中で思った。


「ぼーっとしてるなよ……!巻き込まれんじゃあねぇ!そら!」


パシン!と馬の尻を叩いて、馬を驚かせる。

当然、馬は怯えて長州藩邸の中へと突進していった。

それと同時に、私は高杉さんの背中におぶらられて、馬とは反対の方向へと進みだした。


「上手くいった――……!朔、お前の役割はここまでだ、助かった!例を言う!」


そう言って貰えて、私の胸にはじんわりと暖かいものが広がったようだった。


「お、お役にたてて……良かった、ですっ……!」


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