夕焼け色に染まる頃


ぎゅうっと高杉さんの背中の着物を握った。

所で、高杉さんの走る足音がどんどん鈍くなってくる。


「……高杉さん?」


心配になって名前を呼べば、ふわりと木陰に降ろされた。おかしい。

すぐさま私から顔を逸らした高杉さんは、口元を抑えて何かを我慢しているようにも見えた。


「大丈夫ですか、高杉さん!?が、我慢しちゃだめです……!」


半ば反射のように高杉さんに近付いて、背中をさする。

固く瞑っていた目を開けて、高杉さんは何かを言おうと口を開きかけた。


「ば、お前……っ離れて……ぐっ、」


刹那、高杉さんはすごい勢いでせき込みだした。

それこそ、声を出すことなんてままならないくらいに。


闇夜、長州藩邸からはすでに離れており灯りはほぼない。

人通りもあるはずがない。


「高杉さ……っ!?しっかりしてください、大丈夫ですか!?高杉さん!」


どうする事もできずに、ただただ苦しそうな高杉さんの背中をさすり続けた。

そうして、密かに唇を噛み締める。

そうだ。忘れていた。


私の知っている歴史では、高杉晋作は――……肺結核と言う、この時代では不治の病とされるものに蝕まれてしまうんだ。


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