夕焼け色に染まる頃


ぽたり、ぽたりと口元と抑える高杉さんの手から血が滴った。

どうしようもできない。

私じゃ、高杉さんの病を治してあげることは出来ない。


どうしようもなく悔しくて、悲しくて。

私は、背中をさする手を止めて高杉さんを抱き締めた。


「落ち着いて……息をしてください。高杉さん……大丈夫です、から」


言いようもなく悲しくなって、私の目からはいつの間にか涙が溢れた。

大丈夫、なんて言葉は私自身に言っているみたいだ。

大丈夫、まだ高杉さんは死なない。


死んで欲しくない。

まだ、まだ――……一緒にいたい、一緒の景色を見よう。

沢山したいことがある、なのにこんな時にこんな方法で思い知らされてしまうなんて。


「高杉さん……!」


「っ……ゲホ、…何、泣いてやがる……朔。ただ咳き込んだだけだ、そんな心配するようなモンじゃねぇ」


大分落ち着いてきたのか、高杉さんは顔を上げた。

でもまだ、息が荒くて、苦しそうで。


「……泣くなってんだ。なんともねぇ、そう言ってんだろ?……もうおさまったから大丈夫だ。伊藤達の援護に行く」


「……はい、でも」


「でもじゃねぇ」


まだ苦しそうですよ、行かないでと。

そう言おうとしたのを、高杉さんはわかっていたかのようにすかさず止めた。


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