夕焼け色に染まる頃
「いや、お前さ。俺はんなこと言ってねぇ、今のは奴らが勘違いしただけだ」
顔の前で手を振る高杉さんは、なんとも呑気そうだ。
だけど私はそんなことしてらんない、このままでは鍵つきの頑丈な部屋に押し込められてしまうじゃない……!?
そりゃあ、そりゃあ勿論、ホイホイついて来ちゃった私も私だけれども、強引に連れてきたのは高杉さんなのに。
「健闘を祈る」?
そんな事言われたって、この危険な時代で私みたいな平和ボケした女が生きていける訳ないのに。
どうすれば良いんだろう。
あぁ、でも。
私には現代で待っていてくれる人なんているわけない、むしろいなくなって喜んでいる人ばかりかもしれない。
そんな人生を、歩いてきたはずだ。
まだ開かない門を見つめていれば、それはだんだん歪んで滲んで、しまいには自分で目を閉じて見えなくなってしまった。
涙って熱いんだ、って思う。
頬に伝う涙がとても熱く感じたから。
「……っ、……」
声を圧し殺して、それでも私はやっと今、不安な感情をさらけだして泣くことができた。
「ほらよ」
そんな私に、ひらりと手拭いらしき物を投げた高杉さんは多分また私を見ていないのだろう。