夕焼け色に染まる頃
07
そこから、高杉さんを待っていたがとてもとても長く感じた。
……はやく。
はやく時よ進め、高杉さんを危険に晒している時間なんて早く終わればいい。
どうしても震えてしまう手を抱えて、私は木陰にかがみこむ。
その時だった。
「誰かいるのか!」
いきなり、背後から男の人の声が聞こえてくる。
はっとして息を呑み、それが誰だか見極めようと耳を済ました。
「どこの手の者だ?もしや間諜か?……答えろ、そこにいることはわかっている」
怖い。
どうしよう。
ガサガサと葉っぱの音がこちらへと近づいて来るのがわかった。
ちらちらと篝火らしきものの光が辺りに広がって、私の目の前には自分自身の影が出来ていた。
――……ヤバい!
気付けば足が動き出して、逃げ出していた。
「待て!」
当然、相手も私を追ってくる。
誰か。
誰か助けて!
しかし、男の人の足に女の足が通用するはずもなく、私はあえなく捕まってしまう。
ぎりりと手首を掴まれて、ぐいと引っ張られた。
その痛みに無意識のうちに顔は歪み、それが男の前にさらされた。
「……お前」
至近距離。
いくら暗がりで、照らす光が篝火しかなかったとしても、相手の顔くらいは見えた。