夕焼け色に染まる頃
しかしそれは同時に、私の顔も相手に見えているということだ。
じわりと広がる恐怖。
それとは裏腹に、相手はにたりと嫌な笑みを浮かべた。
「ほぉ……お前、どうりでいなくなったと思ったらこんなところにおったか」
そう、そいつは。
私が演技で騙し、門を無理やり開けさせた門番の人だった。
「ふん、近くで見ればなかなかの別嬪と言うところ……」
じろじろと不躾なまでに私の顔を見て、相手は舌なめずりをした。
悪寒が背中をよぎる。
「貴様、……いいや姫だったか。どうしてそのような格好をしている?」
「……」
その言葉に言い返す事は出来なかった。
「答えよ、偽物め!」
ツン、と何か細く鋭利な物が心臓を突いたように感じた。
あぁ、そうだ。
あのあと高杉さんは私の着ている重い着物を馬に掛けて放った。
きっと、あれのせいで何らかの推測がたてられた事だろう。
どこぞの姫がさらわれた、だとか、神隠しにあって消えた、なんてことでもこの時代ではおかしくないと思う。
ただ、問題なのは、それを演じた私がこんな所にいるのを見られてしまったことだ。
ごめんなさい高杉さん、と目を瞑る。
さぁ、どう答えよう。
心臓が早鐘のように鳴っていた。