夕焼け色に染まる頃


「馬鹿にしやがって……っ!」


押し殺した低い声で、相手は唸った。


「女の分際で武士に楯突くとは、余程命がいらないと見える……」


じり、と詰め寄られて、私は一歩足を後方にひいた。

しかし、掴まれている腕をぐいっとひかれて、私は相手のいる方へぐらりと傾く。


「いやっ……!」


一歩間違えたら男の胸の中へ衝突していたところを、なんとか体を捻って回避をした。

しかし、そのまま重心を崩してぐらりと身体が傾く。


いけない、このままだと……!

嫌な汗が再び背中を流れて、私はぎゅっと目を瞑った。


ガサッという枯れ葉の音。

それは耳の近くで聞こえて、私はこの門番の男に組み敷かれているのだと気がついた。


「……いっ……!な、なにをするんですか!」


気が動転して、じたばたとがむしゃらに暴れまくる。

しかしそんな抵抗も虚しく、男の力の前にはどうすることも出来なかった。


「お前は、高杉の女か、ん?」


にたりと男が笑った。

あぁ、悪い予感は的中してしまうようだ。

こんな状況であるにも関わらず、質問に対してカッと頬を染めてしまった私は、悔しさで歯軋りをした。


「だったら!!どうすると、言うの!離してっ!」


< 123 / 189 >

この作品をシェア

pagetop