夕焼け色に染まる頃
「馬鹿にしやがって……っ!」
押し殺した低い声で、相手は唸った。
「女の分際で武士に楯突くとは、余程命がいらないと見える……」
じり、と詰め寄られて、私は一歩足を後方にひいた。
しかし、掴まれている腕をぐいっとひかれて、私は相手のいる方へぐらりと傾く。
「いやっ……!」
一歩間違えたら男の胸の中へ衝突していたところを、なんとか体を捻って回避をした。
しかし、そのまま重心を崩してぐらりと身体が傾く。
いけない、このままだと……!
嫌な汗が再び背中を流れて、私はぎゅっと目を瞑った。
ガサッという枯れ葉の音。
それは耳の近くで聞こえて、私はこの門番の男に組み敷かれているのだと気がついた。
「……いっ……!な、なにをするんですか!」
気が動転して、じたばたとがむしゃらに暴れまくる。
しかしそんな抵抗も虚しく、男の力の前にはどうすることも出来なかった。
「お前は、高杉の女か、ん?」
にたりと男が笑った。
あぁ、悪い予感は的中してしまうようだ。
こんな状況であるにも関わらず、質問に対してカッと頬を染めてしまった私は、悔しさで歯軋りをした。
「だったら!!どうすると、言うの!離してっ!」