夕焼け色に染まる頃
「高杉さん………、高杉さん!!」
「無駄だ!誰も来ねえよ!」
「高杉さん!たす、けて……っ!」
「五月蝿い、黙れ!女は黙って抱かれてりゃいいんだ!」
「……、…っ」
目尻に溜まっていた涙が、ポロポロと溢れ出した。
初めて流した、生理的な涙だった。
男の唇が、そっと私の首筋這い出す。
その時になってやっと、私は自分の体がガクガクと震えていることに気がついた。
高杉さん。
高杉さん、怖いよ。
やだよ。助けて。
「――――……高杉、さん…っ…!」
この声は聞こえてくれないのだろうか。
幾分か離れており、しかも乱闘が始まっているやも知らない藩邸には、当然のごとく私の声なんて届かないのだろう。
けども。
私が高杉さんを呼ぶのは、どうしだって――……高杉さんが助けにしてくれるんじゃないかなって心のどこかで期待しているからだ。