夕焼け色に染まる頃
02
「ねぇ、朔ちゃん。私聞いたんだけどさ、朔ちゃんって――……」
あぁまたその話か。
いい加減聞き飽きたし、詰まらないよ、そんな話。
「お父さんとお母さん、いないって本当?」
「……うん、本当だよ」
こんなとき、友達はとても申し訳無さそうな顔をして聞いてくる。
だから私は、少しだけ悲しげに眉尻を吊り下げて言葉を返すんだ。
「ごめんね、こんな話して。嫌だよね、ごめんね?……ごめんね、朔ちゃん」
「うぅん。それよりさ、その話知ってるって事はさ。もう全部、知ってるの?」
「……うん。ごめんね」
さっきから「ごめんね」を繰り返す友人は、顔を青ざめて慌てた。
別に私、こんな事で泣かないよ。
だからそんなに慌てることないよ。
むしろね、泣きたくなるのはこの後なんだから。
「そっか。まぁ、仕方ないよね。いつか知られちゃうんだろうなぁ、とは思ってたから。そんな謝らないで」
「朔ちゃん――……、それって」
「うん。本当だよ。全部本当。私のお父さんとお母さんは、私を巻き込んで一家心中したんだよ。……っていっても私は生き残ったんだけどさ」
(「生き残っちゃった」、か。だって今は、生き残ったことを後悔してるんだから)
自嘲気味に笑って見せる自分が気持ち悪かった。