夕焼け色に染まる頃
溢れた涙を、高杉さんの手が優しく拭う。
それが暖かくて、くすぐったくて、私は唇が緩むのを感じた。
………やだ、こんな場面で。
不謹慎だってわかってる。
けど溢れる「嬉しい」の気持ちは簡単にはおさまってくれなかったんだ。
「なぁに、笑ってやがんだよ」
それにつられるようにして、高杉さんの表情も緩む。
「………………だって」
「だって、何だよ?」
「……………」
黙る。
嬉しい、だなんて言うのが恥ずかしく感じた。
「言えよ、朔」
小さく、意地悪そうに咽の奥で笑う高杉さんの手が、頬から離れた。
そのまま向かう先は―――………
「むぐっ」
私の鼻。
「や、やめれくだはい、たかすぎさん、」
「やだね。言えって。お前、いつもいつも我慢して言わないことばっかじゃねえか」
「………今は我慢してません!」
「だったら言やぁ良い」
「でも!」
じ、とこちらを見る高杉さんの視線とかち合った。
………降参だ。
高杉さんの、あの真っ直ぐな目に見据えられちゃったらいくら意地張ったところでバレちゃう。
否、多分バレてるからあんな顔をするんだ、高杉さんは。
たち悪いなあ、でも、
「嬉しい、って思いました」
そんな高杉さんになんども救われてる。