夕焼け色に染まる頃
そんな私に、高杉さんはまたしても振り向く事なく自分の着る羽織を脱いで後ろ手に差し出した。
「あ、ありがとうございます……」
おずおずと受け取りつつ、視線を開けて高杉を見れば、なんとなんと!
この羽織を受け取ってしまったら脱いだ高杉さんのほうが薄手で寒そうではないか。
「た、高杉さん、やっぱ私良いです。高杉さんが着ててください」
もう片手が触れている、けれどもその状態からずいっと突き返した。
「あ?」
高杉さんはくるっと頭だけ回して此方を見る。
「何いってんだよ、別に俺は寒かねぇんだ。お前が着てろや」
ずいっ。
羽織は再び私に差し出される。
「で、でも!これを脱いだら高杉さんのほうが寒そうじゃないですか……!高杉さんが着ててください!」
ずずいっ。
また、私は高杉さんに押し返す。
それも、両手でだ。
さすがにむっときたのか、高杉さんは体ごと此方を向いて不機嫌面を全快にした。
「だーかーらー!俺は寒かねぇの!てめえのほうが寒そうじゃねぇか、女の癖にヒラヒラした着物着やがって!」
「なっ……!これは、あの……」
それを言われると、確かに言葉につまる。