夕焼け色に染まる頃
「それってどう言う意味でしょう」
「さぁーな。わっかんね」
「………む。言ったのは高杉さんなのに」
「まぁほら。お前今、『大丈夫』だって俺に言う前に色々とごちゃごちゃ考えたろ?それだけだよ」
考えるのは悪いことだろうか。
否、別に高杉さんだってそれを悪いと言っているわけではない。
けれども何故か、高杉さんは笑いながら言外に「余計な事は考えんな」、なんて言いながら私の頭を撫でているように見えた。
そんな高杉さんを見上げる私の表情はさぞかし不服そうに見えた事だろう。
ポンと一つ、優しく跳ねるように撫で終えた高杉さんは、ふと笑む。
「さって、そろそろ俺も部屋に戻らにゃ伊藤にぶっとばされてしまわぁ」
「…………は」
「いやなに、本当は部屋から出ちゃあいけねぇって言われててよ」
え、それってやっぱりあの時の咳が、とか?
「高杉さ、」
「ってぇ事で、ひとまず失礼ー。そろそろ伊藤がここに朝食運びにくんだろ。ちゃんと食えよ、お前まだまだ成長期のガキなんだから」
「ちょっ………!」
何を聞く暇もなく、高杉さんは私の部屋を後にしてしまう。
後に残された私は、もう何がなにやら……。
「子供扱いしないで下さいよ…」
呆然と、そう呟くしかなかった。