夕焼け色に染まる頃

高杉さんの言葉を受けても尚、からかいを込めた言葉を返す伊藤さん。


そんな伊藤さんに、「おめぇなんもかわんねぇな」なんて言いたげな、まぁ一言で簡単に言ってしまえば呆れたように一瞥してため息を吐き出した高杉さんは説明するのを放棄した。


が、故に、こうして私が自分自身の現状を伝えることとなる。


ひとつ、伊藤さんは緩やかな笑みを浮かべたまま頷き。


「うむ、それは良かった。とはいえ、嫁入り前の綺麗な肌に傷がついたとあってはならないこと。高杉君は引き続き朔君の御世話にあたられよ」


なんて、実に芝居がかった言葉を高杉さんに投げ掛けてはまた小さく笑い声をこぼすのだ。


「っせーなー、俺だって病人だってのによー。第一なんで俺様がお前からの指図うけなきゃなんねぇんだ」


そんな不貞腐れた声が隣から聞こえて。


「おや、ではその役目他の者に……」


「いや駄目だ」


会話中の即答での言葉に可笑しくて吹き出すと共に、何故か嬉しいという気持ちがじんわりと沸き上がってきたのは私だけの内緒である。


なんとなく、胸の内に大事に大事にとっておきたい気持ちだと思ったものだから。