夕焼け色に染まる頃


あれから数刻後、賑やかな朝食を終えた私と高杉さんはもと居た部屋の前、縁側に揃って腰をおろして広い庭を見ていた。

なんとなしに空を見上げ、ピリリと痛む背中の傷口に眉を寄せる。


「……今日は御天気がいいですね。御天道様がご機嫌ですよ」


「餓鬼か」


そんな他愛ない会話から始まって。

ポカポカ陽気は、私に安心をくれる。


同時にそれは、言い方を変えれば気の緩み。

眠気。

……あとはなんだろう。

けれども、どんなに言い方を買えようと高杉さんの前であればそれは「安心」になるのだと私はちゃあんと理解している。


そうして、何故そう思うのかも理解しているつもりだ。


「……なあ、朔」


不意に真剣さを含んだ声色。

時期が時期なだけにあまり良い予感はしなくって、少しだけ眉尻を下げながら。


「なんですか」


出てきた声は、なんとまあ小さくて頼りないものだった。


「率直に言う」


「はい」


短い言葉のやり取りだった。


「俺はお前をひとつ知れたな」


「はい」


「そのひとつはとても大きなひとつだ」


「はい」


「なら、それくらい俺はお前に気を許されているんだな」


「そうです」


「ならば、もうひとつ望んでもいいか」



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