夕焼け色に染まる頃
さっきまでみっともなくボロボロ泣いていたせいもあって、涙が乾いたあとの頬はパリパリしている。
その感覚に唇を一文字に結びながらちらりと高杉さんを見上げた。
「その羽織、脱ぐなよ。ついでにいえば前をしっかり閉めておけ」
いいな。
そう言えば、最後にもう一回ポンと頭を撫でて高杉さんは頭から手を離した。
ぎぎぃ、と古い扉の開く音がして、門が開いた事に気付く。
あ、やっぱり時代劇の中にいるみたいだ。
そんな事を思って見とれていれば、高杉さんはもう足を進めていた。
「あ、まって高杉さん……!……きゃ!」
私に構うことなく門を潜り抜けていく高杉さんの後を追い、やや早足で中に入ろうとするけれども。
何故か私は、門の前で何かに止められてしまった。
「何用だ、娘」
「ここから先は関係者以外立ち入る事はできぬ、立ち去れ」
「そんな……」
よくよく見てみれば、私を門の中に入れまいと隔てているのは長い長い槍。
それがばってんに交差して入り口をふさいでいる。
「私は高杉さんに連れられて来たんです!あ、怪しい者じゃありません……!」
お願いです、高杉さんを見失う前にここを通してください……!