夕焼け色に染まる頃


「ん?なんだ、その顔は。別に深い意味なんざねぇよ」


「え」


「あると思ったかよ?」


「はい、高杉さんがそういう顔をするときは大抵」


お前なあ、なんてどこか呆れたような顔でちらりと見てから、また空を見上げた高杉さんは短く息を吐いて。


表情の変化と、それに伴ってなにを考えているのかは何となくわかってきてはいるけれども。

結局、高杉さんの瞳には何が映っているのかは全くわからない。


私が想像するよりも大きく、遥か遠くまで見えていそう、なんて思うくらい。


「……若いときにな、留学したことがあんだよ。上海にな」


「留学。すごいですね、こんなご時世に……」


「まぁな、俺だし。で、そこでのことはすげぇ刺激になった。外は、外国はすげぇんだなって単純に思ったし、変わりに外から見た日本ってのも見ることが出来たさ」


「………高杉さん?」


それを聞いて尚更、高杉さんの考えていることがごっちゃごちゃになりました。

そんな意味を込めて高杉さんの袖を引けば、ぷっと小さく噴き出される。


あ、笑われた。


ていうか、笑った。


「お前の頭にゃ難しいか、悪かったな」


そう言いながら、もう一度私の頭の上で手を弾ませて。


「うし、外出るか外。お前、怪我の調子は割りと良いんだろ?」


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