夕焼け色に染まる頃


咄嗟に前を歩く高杉さんを見れば、私の状態に気づかなかったのか颯爽と歩いていく背中が見える。

辺りはもう暗くて、今にもその背中は闇に紛れて見えなくなりそうで……焦って私は胸の前で交差する槍をぐいっと下に下げた。


「なっ……!」


いきなりの私の行動に驚いたのか、番をしていた侍はよろける。


「お前……!さては、高杉さんが連れてきたという怪しい奴か!」


一人の侍はキッと私を睨んだ。


「怪しくない、って言ってるじゃないですか……!」


「嘘をつけ、では名を名乗ってみろ小娘!」


「……っ」


つい、息を呑んで言葉を止めてしまった。

そのせいで侍は自分の考えに確信を得てしまったのか勝ち誇ったような顔をする。


「違う!違う違う!私は怪しい者じゃない……!」


それが悔しくて、つい声を張り上げた。


「朔!私の名前は朔です、高杉さんに拾われてここに連れてこられたんです!」


下に下げていた槍をパシッと横に払って、睨まれているというならばこちらも睨み返し。

けれどもあの時の私の表情はとても滑稽だったことだろう、恐怖と戦いながら強がって睨んでいたのだから。

ただ、幸いな事に侍は黙ってしまった。
私の睨みを真っ直ぐに受け止めて、試すように見詰めてくる。


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