夕焼け色に染まる頃
「まあ、行けばわかるだろうしよぉ……、こう、雰囲気とかそんなもんで。お前も似たようなところにいったことあるからなあ」
「似たようなところ?」
この時代にきて行ったところなんて、かなり限られている。
頭を傾げて、どこのことを言っているのか考えて見るのだけれども、結局わからず終い。
「そそ。別にわからなくてもいいし、お前はただ俺の側に置いときたいから連れてきてるだけだし」
ぽん。と、頭の上に置かれた手の重みに負けたように見せて、俯く。
じゃないと赤くなっちゃった顔が高杉さんに見えてしまうから。
まったく、こういうことを不意打ちに、しかも何気無く言ってくるものだから困る。
「ああ。昼間っからお熱いのはいい事だがね、そのお目当ての場所につきましたよご両人。さて朔君、君にはここがどこだかわかるかな?」
くすくすとわかりながら問いかけてくる伊藤さんは、きっと私の状態をわかっていってるんだから、やっぱり意地悪だと思う。
悔しさ紛れにぱっと顔をあげれば、視界に飛び込んできたのは。
「長州藩邸……?」
そう、そこは、クーデターの時に見た長州藩邸とどこか似ていて。
でも、違う。
自分で、とっさに漏らしてしまった言葉に否定の意を示し首を振る。
「もしかして、薩摩藩邸……ですか?」
そうだ、繋がった。
京都。
高杉さんがいて、伊藤さんがいて、あとから桂さんもくることになっていて。
坂本さんと、中岡さんと、薩摩藩には西郷さん大久保さん………
体が、震えた。