夕焼け色に染まる頃
薩長同盟。
その言葉が脳裏をよぎり、息を飲む。
それは、歴史の教科書には必ず載っていることであり、私の頭の中にも勿論記憶されている。
今日は何日だったか、いやまだ今日ではないかもしれない。
ともかくそんなすごいことがなされる場に、私なんかがいていいものかと戸惑ってしまう。
「あの、高杉さん。ここは……」
「お。その顔を見るに、早くも察したって感じか。流石だなあ、そうそう。ここが薩摩藩邸。どこまで知ってるかわかんねぇが、まあこれから大事な話し合いがここであるってぇわけよ」
「……ふふ。朔君が戸惑っているよ、晋作」
私の顔を見て、伊藤さんが含み笑いを零した。
失礼しちゃう、高杉さんも伊藤さんも、私がこうやって戸惑うってわかってるくせに何にも言わないで連れてきて、こうして反応を見て楽しんでいるんだから。
む、として二人を見て。
「私、京の町をお散歩でもしていた方がいいですかね?流石に、その、話し合いの場にまでお邪魔するのは気が引けますし!」
「お、待て待て。一人で散歩か?そりゃあぶねえよ、京だって安全なわけじゃあねえんだぜ」
って、言われても。
伊藤さんも高杉さんも話し合いなんだからどうしようもないじゃない。
一歩、二歩、後ろに下がりながら。