夕焼け色に染まる頃
「素朴な疑問なんですが。沖田さんは、新撰組の隊士で、その中でも偉い人な訳で。何故、そんな方が私とこうして他愛ないお喋りをしながら、安全のためにと手を繋いでくださって、甘味処へと連れてってくれているのでしょうか?」
「……それは、素朴な疑問と言えるのか否か……」
クスクスと、沖田さんの笑い声が聞こえて。
目の前の背中が、小刻みに揺れるのがわかった。
不意に立ち止まり、赤い暖簾をくぐっては私がくぐる間その暖簾を抑えててくれて、そんな細かな気遣いもなんだかくすぐったい。
「ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず。とりあえずさっきの質問は席について注文を終えてからにしましょう—————……おまささん、お冷を二つ、此方の方へお願いします」
店員さんにお冷を頼みつつ、沖田さんは一つ丸椅子を引いて私に座るよう促してから、自分は目の前の席に座った。
おとなしく促された椅子に座り、これまた沖田さんから手渡されたお品書きを見て即決。
「あんみつで!」
「ですよね。よし、決定。あんみつふたつ、お願いします!」