夕焼け色に染まる頃
ただ、その余裕をきっと沖田さんも感じていて、だからこそ余計なことができないんだと思った。
……私は、なすすべなく二人のやりとりを見ているだけなのだけれども。
「お代はいりません。僕が好きで奢らせていただいただけなのですから。ただ、—————……」
そこから、沖田さんの声小さくなる。
少しだけ高杉さんの方へと体を寄せて、何事か囁いたようだった。
含むように乗せられた薄い笑顔、それが整った沖田さんの顔に妙に合っていて怖い。
「……よく言うよ。このクソガキ」
そんな小さな高杉さんの一言と同時に、近かった二人は離れて不敵に笑いあう。
「ガキなんて歳ではありませんよ。……さて、お迎えもいらっしゃったことですし僕はここらでそろそろ。それでは、朔さん。京の治安も良いとは言い難いのです、きょみたいに私が丁度良く現れることなんてそうないでしょう。どうか、お気をつけて」
「あ。……え、っと、はい。すみません、今日はありがとうございました。沖田さんのもどうかお気をつけてくださいね」
「はい。ありがとうございます。では」
そう言って席を立ち上がった沖田さんは、お会計分の銭を売り子さんに渡し、颯爽を店を後にしてしまう。