夕焼け色に染まる頃




驚いて、どこかこそばゆくて、反射的に身を引こうとしたのに高杉さんの身体はびくともしない。


「くそがよ……。焦ったじゃねぇか。あんな状況でいきなり消えられても会談の時間は迫ってるから追いかけられねえし、挙句の果てには後から合流した伊藤なんかにも朔君なら大丈夫だろう。とか言われちまうしでよお……」


「高杉さん………」


あぁこの人は心配してくれてたんだって、思った。

その間には、私も沖田さんと一緒にいながらも高杉さんを心配してた。

ねぇ、私達、同じこと思ってたんだよ。

そう思ったら何故だか涙が出てきそうになってしまって、ぐっと堪える。

言ってしまえばゼロ距離、とても近い所にある高杉さんの逞しい身体にそっと自分の体を沿わせて、腕を回して。

できるだけ近く、できるだけ多く、高杉さんの温かな体温を感じようとした。


「……ごめんなさい。高杉さん。でもどうか、これだけは分かって欲しいんです。私、高杉さんの邪魔をしたくなくて」


「あー…、わぁってるよ」


「上手く、行きましたか?」


「ったりめーだろーがよ。てめーのせいで気が気じゃねぇなかでもな、なんたってそこは俺様なんだからよ。仕事くらいちゃんとすらあ」


「よかった。……よかった……!」


「ても、まぁあと何回かあそこには通わなくちゃなんねえなあ。っつーなおめーなぁ。小娘が、いっちょまえに仕事のことなんか気にして気ぃつかってんじゃねえーよ!」


パチン!と音がして、少しした後に自分の額が弾かれたのだと分かった。

きょとんとしてしまって、その顔が面白かったのかなんなのか目の前の高杉さんの顔は満面の笑み。

それにつられて笑ってしまって、額がジンジンと痛むのもあまり気にならなかった。


………せめて。

この人の志すものを、一緒に、……見ることができたなら。

ううん、そんなの贅沢。

ただ、—————……貴方が志し、頑張ってきた先の未来はとても素敵なところだと、伝えることができたなら。

見せることができたなら。


「うし。帰るぞ、朔。今日の夕飯はうまいに違いない」


ひとつ、仕事を成功させたんだからなと、嬉しそうに笑う高杉さんに笑顔でうなづきながら、私は泣きたいような気持ちになる。


—————……ねえ、神様お願い。



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