夕焼け色に染まる頃
つい、一歩身をひいてしまう。
そんな私を見て、侍は腰を屈め視線をわざとあわせた。
目と目がパチリと合い、私は顔をひきつらてしまう。
「ん、なんだ。あんなに威勢良く言い切っておいてやはりできなくなったか、え?」
くつくつ、笑いながら顎を右手で撫でながら問い掛ける侍はとても楽しそうだ。
悪趣味な人だなぁ、人が困るのをみて楽しむだなんて!
「ほら、どうする娘。脱ぎたくなきゃ他で怪しい者じゃないと証明して見せろ。それか帰れ」
カッチーン。
「わかりました脱ぎますよ、だから私を信用してください。てかもし私が何も持ってなくて怪しい者じゃなかったら、」
息をすう。
ここまでしようとする私をまだ疑うと言うならば、言ってやろう。
「貴方切腹してくださいね」
侍の眉が、怪訝そうにしかめられるのが見えた。
けれどもそんなのはお構い無しにするりと羽織を脱ぐ。
高杉さんから借りた羽織、暖かかったのにな……。
脱いだ瞬間に刺さる冷気で私はふるりと震え、肩を抱けば侍の方を向かずに言い放つ。
「年頃の女にここまでさせているんですから、切腹くらい当然ですよね……?」