夕焼け色に染まる頃
「うるせぇっ!」
怒号とともに、なにやら黒い物が目の端に映った。
サクッという音。
続いて、スッコーン、という大きな音が頭の中に響いた。
実に大きな音……は、自身の頭に何かがあたったせいで脳内に響いたもの。
「いっ……!」
「ひっ……!」
直後、頭に走る激痛に頭をかかえてうずくまる。
侍はのけぞったようだった、ちらりと見える足が私から遠ざかったのが伺える。
「バカ共が!何時だと思ってやがる、近所迷惑も良いとこだ!」
いやぁ、こちらに向かいながら怒号を放つ高杉さんが一番近所迷惑だと思います。
……なんて言えるはずもなく、頭を抱えたままそれを聞いていれば上をひゅんっと何かが風をきったのが感じられた。
「ぐっ!」
そして侍の短く呻くような声、ザッと高杉さんが近くに立った音。
そろぅりとその足を見てみれば、片方の足の草履がなくて何をしたのかが一瞬で伺えた。
……草履を侍に向かって蹴り投げたんだ。
風を切るほどの威力で。
そう気付いた瞬間にサーッと血のひく感じがわかって、頭より口元を押さえた。
「おーい、女。顔、上げていいぜぇ」
ブンブン、首をふる。
正直、頭はもう痛くないのだけれども顔があげられない。