夕焼け色に染まる頃
「しょうがねぇなぁ……そんな強く扇子を投げたつもりはなかったんだが……一応年頃の娘、……だしなぁ……?」
そんなことを私に聞こえるように呟きながら、高杉さんはしゃがみ込んできた。
「お前………」
顔を近づけてきて、それでも私は顔をあげられない。
てかむしろあげられない。
そう言えば、この門を守っていた侍は二人いたはずじゃない…!?
なんで何も言わないの!
なんて耳を済まして見れば微かに笑い声が聞こえた。
「なっ……!」
それに言い返そうと顔を上げて振り替えれば。
振り、替、え、れ……、
……なかった。
顔を上げた瞬間にガシッと高杉さんに頭を押さえられて、面と向かわされる。
ひぃ、近い。
「お前……、」
ひく、と怒りで高杉さんの唇の端がひきつった。
「馬、鹿、な、わ、け?」
ひとつの音事に息を吸って、あらやだなんて聞き取り安く言ってくれるのかしら……。
「いやあのそのえと、だだだだって、」
「言い訳?」
「いっ、いやいやいや、そんな恐れ多い……!」
「俺は言ったよな、羽織を脱ぐなと。……言った、よ、な!」
「はぃいっ、言いました!」
ぐりぐりぐりぐり……。
高杉さんが私の頭を挟む手に力を入れる。
「いだだだだだだ……!」