夕焼け色に染まる頃
その言葉に思わず身震いをしてしまったのは言うまでもない。
「余計な事吹き込んでんじゃねえや。オラ、着てろ女。次脱いだら蹴り飛ばす」
「……ハイ」
……自惚れるもなにも、この人はそういう人みたいだ。
パサリと掛けられた羽織は肩に掛けるだけにとどまらず、首の周りで縛られた。
腕に通していない袖を優しく縛る高杉さんの顔をじぃと見る。
隣にいる桂さんがクスクス笑っているのが聞こえたけれども、ただじぃと見ていた。
「ぐるぐる巻きにしねぇだけ感謝しろバカたれ。逃げたら蹴り飛ばすかんなぁ」
「……ハイ」
……。
つまり、桂さんの"斬る"発言はウソで、今のこの高杉さんの行動こそが私を信じてくれた証らしい。
だって、もし私だったら信じてない人に「逃げるな」って言うくらいならば羽織で手か足をぐるぐる巻きに縛っちゃうもの。
「けっ。いくぞ小五郎」
「……高杉さん」
「そこの女もだ」
先を歩いて行く高杉さん。
その背中を見ながらちょっと笑った。
隣で桂さんも歩き出すのがわかって、ふとそちらを見れば桂さんと目があって。
桂さんが優しく笑うもんだから、つい私もつられて笑っちゃったんだ。