夕焼け色に染まる頃


しかし、今になって私は自分の失言に気が付いた。


「お、おりんぴ……?」


「朔ちゃん、なんで僕の名前知って……?」


ぷりぷり怒っていた私に対照的に二人は不思議そうに顔を見合わせている。


「……い、いえ。今のは忘れて下さい。とりあえず、あの階段をお二人のような速さで登るなんて私には到底無理です、って話なんです」


「んだよ、気になるな……」


ドカッ、と部屋の前、しかも中央に置いてある座布団に座りながらぼやいている。

ちなみに、その隣にもう一人、誰かが座っているのに気付いていない。

誰だろう、身なりからして武士とかそんな感じ……がしないでもない。

とりあえず、武士の癖に人の気配に気付かずぼやき続ける高杉さんって大丈夫なんだろうか。

そんな高杉さんのもう片方の隣に置いてある座布団にすわりつつも、桂さんはクスリと笑った。

気配に気付かぬ高杉さんに対してか、それともぼやき続ける高杉を胡座をかき腕を組んでニヤニヤと見つめる隣の人に対してか。


「まぁ、まぁ。たしかに、あの階段を普通のおなごに僕達と同じ速さで登れと言ったって無理さ」


っと、ちらりとこちらを見る。
瞬間、その視線の意味がわかって私は口元をひくつかせた。


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