夕焼け色に染まる頃
ごめんなさい、私は普通以下の運動能力です。
そういう意味を込めてしゅんとすれば、ぷっという吹き出す音が聞こえた。
「おや、これは失礼失礼」
どうやら吹き出したのは高杉さんを面白そうに隣で観賞していた侍の方のようだ。
やってしまった、とばかりに口元に手を当て、けれどもその唇は弧を描いている。
「てめぇ、小五郎。いつからそこにいやがったんだ」
あ、やっぱり気付いていなかったんだ。
きょとんとして隣の侍を見る高杉さんに、今度は私が吹き出しそうになった。
「いやぁ、さっきからいたはずだけど。高杉さんが入ってきた頃から」
「おっと。そりゃあすまねぇことをしたな」
ガリガリと頭をかきながら、簡単に頭を下げれば高杉さんは次に桂さんを見た。
そこで、私は1つ違和感を感じる。
"小五郎"?
小五郎って、桂さんの名前だよね。
だって、高杉さんは桂さんのことさっき小五郎って呼んでたし、私が間違えて桂さんって呼んじゃった時桂さんは反応したんだから。
でも今、高杉さんは隣の侍の事を"小五郎"って呼んだ、よね……?
単純に高杉さんが間違えたのか、それとも……。
とりあえず私は、桂さんに向かって何かを言わんとする高杉さんをじっと見つめる。