夕焼け色に染まる頃


部屋の中が、いっきに静まりかえったように感じた。

その中に一人私は放り出されて、怖くて、緊張して、膝の上に乗せる手が震える。


「私は、未来から来ました」


そして時間が一瞬、止まったように思えた。
ピタリと、緊張した雰囲気が氷のように固まり。


「……まさか……」


夢見心地で私を見ていた高杉さんの一言で、氷が砕け散ったかのように空気がざわついた。


「未来、とは?」


「言葉の通りですよ。未来、つまりこの世の中の時間軸において今よりも先から来たんです」


「まって……俺の頭がついていかないんだけど……?」


冷静に質問をしてくる桂さん。

けれどもその目は動揺の色が浮かんでいて、それが移ったかのように石川さんも挙動不審だった。


「石川さん、落ち着いてください。本当に、この娘さんの言った通り未来、ですよ。……しかし……」


< 34 / 189 >

この作品をシェア

pagetop