夕焼け色に染まる頃
「さすが小五郎、ってぇとこかい」
そう、ポツリと呟く高杉さんの声が聞こえた。
「え?」
その呟きをしっかりと聞いてしまった私はつい後ろを振り替えって高杉さんを見てしまう――……その瞬間。
グンッと重心がずれて、そのまま転んでしまいそうになるのを片足を出し、すんでのところで押さえれ、ば、……。
私は何かに引かれて走り出していた。
何か、って言うのは言わずもがな高杉さんで。
因みに、腕を引いて前を走っている。
ちらりと後ろを見れば唖然とする桂さん。
そんな桂さんに向かって、高杉さんはケラケラと笑いながらこう言い放った。
「確かになぁ、あれ以上こいつの無防備な寝顔見てたらなぁにしでかしてたかわっかんねぇな!」
「―――……晋作っ!」
そのまま、玄関へと向かう足。
私は引かれるままに必死で走る、走る。
「しっかしよぉ、小五郎」
「晋作、戻ってきなさい!」
桂さんの声が遠くなってきた。
ごめんなさい、私の体力じゃ高杉さんの駆け足に転ばないようについていくので精一杯で……。
振り切ることも止めることも、振り替えって謝ることも出来ませんでした。
ちなみに言えば、このとき私にはなんとなく推測出来ていた高杉さんの言葉、これを止める余裕もなかったんです。