夕焼け色に染まる頃
「な、なんでそんな事を聞くんですか」
焦って高杉さんに追い付けば、隣に並ぶ。
そんな私をちらりと横目で見れば、小さくため息をついたようだった。
「……朔」
そして戻してしまった視線はそのまま。
私を見ずして、にゅうと手が伸びてきた。
まただ、また、高杉さんは何も見てないのに私のいる場所がわかるんだ。
「お前の世界がどんなモンか俺は知らねぇがな、ここじゃあ男より女が前にでちゃあなんねぇ」
「え、」
そう言って、やんわりと手で制されるように一歩下がった私は少しよろける。
「いいか、朔」
「……はい」
そうだ。
未来とここは違う。
違うんだ……。
高杉さんの足の辺りを見つめながら、すこし思い詰める。
着るものも違うし、男女の境遇だって政治だって違う。
法律でさえ違うんだから、人と人との斬り合いなんて日常茶飯事、だったりするのかもしれない。
「そろそろ、質問の答えを聞かせちゃあくれまいか。大事な事だぜ」
ふと、高杉さんが足を止めた。
え、と小さく声を漏らして足を止めれば、高杉さんは既にこちらを見ていた。
「……着物を仕立てるんだからよ。似合わねぇ着物なんざ着たくねぇだろ、違うか?」
そして、その先には呉服屋さんがあった。