夕焼け色に染まる頃
「いえ……違わ、なくもない……です」
「だろ?」
ぱちくりと瞬きを繰り返す私に高杉さんがプハッと吹き出した。
「早くこい。勝手に決めんぞ」
「え、あ……」
ハッとして高杉さんに駆け寄れば、トンッと背中を押されて。
私は、呉服屋さんの中へと足を進めた。
中にはとても綺麗な生地が沢山あって、どうしても目移りしてしまう。
そんな私を見て、高杉さんか可笑しげに笑っているようだった。
「高杉さん、高杉さん、これはどうです?凄く、綺麗……」
ふと目についた桃色の生地。
それには色鮮やか、というよりも華やかだと表現するに相応しい色彩でお花があしらわれている。
「お目が高いなぁ、お嬢ちゃん」
いつからいたのか、高杉さんと一緒に近くにいた店主さんがニコリと笑った。
私の指差す生地を手にとって、これで良いですかい?なんて高杉さんに聞いている。
「あぁ、それで良い。後は――……あれが良いな。他にもう一着、お前の見立てでお願い出来るか?」
「へぇ、まかしておくれや。ちなみに帯は如何なさいます?」
「あー……任せる」
「はいよ。高杉さんの好い人ゆうたら優先して仕立てなあきまへんなぁ……」
「んな必要ねぇよ。まぁ、3日くらいで完成させてくれるとありがてえが?」