夕焼け色に染まる頃
「おっと。こりゃまた急がな行けませんねぇ……」
高杉さんの言葉を受けた店主さんはぼやきつつも、店の奥に入っていく。
手には私の選んだ桃色の生地と、高杉さんの選んだ深い緑の生地。
そして、入っていく途中でひとつ……可愛らしい黄色の生地を取って。
「高杉さん、なんか……多くありませんか」
「……なんだお前は、毎日同じ着物を着るつもりか」
「な!……そういう意味じゃ、なくてですね……」
高いんじゃないか、と思って。
現代でさえ着物って高いのに、三着もぼんぼんっと買ってもらっちゃっていいものでしょうか……。
「金のことなら心配いらねぇ」
「え?」
思わず黙り込んだ私の意図を察してか、高杉さんはニヤリと笑った。
「むしろ俺の隣を歩くのに貧相な格好してんじゃねぇ。いいな?」
む。
ちょっとだけ、聞き捨てならない事を言われた気がするけれども。
口答えなんて出きるますはずもなく、コクンと頷いた。
「しかしお前、髪がじゃまそうだなぁ……」
そう呟いた高杉さんはフラりと髪飾りの置いてある所へと歩み寄る。
私から高杉さんが少しだけ離れたことで、高杉さんの姿が良く見えた。
あぁ……派手だなぁ。