夕焼け色に染まる頃
まず現代ではいないだろう、そんな着こなし方。
うぅん、確かに貧相な格好で高杉さんの隣を歩くのは恥ずかしいんだろうな……なんて。
「おい、朔。こっちにこいよ」
「あ、はい」
ぼんやりと高杉さんを眺めていれば、ふいと呼ばれた。
そこらじゅうに飾られる生地にぶつからないようにソロリソロリと歩いて行けば、
「おせぇっ」
なんて言って怒られたけれども。
「ちょいと、後ろをむいていろや。………あ、動くな動くな」
クルッと体を回転させてじっと待っていれば、きゅ、と髪が締まる感覚。
「よし、もう良いぞ」
トン、と肩を叩かれてそう言われれば、クルリと方向転換。
再び高杉さんを見れば、満足そうに笑う高杉さんと目があった。
なんだろう?
髪の毛を纏めてくれたみたいだけれども、ゴムらしきものは見当たらない。
恐る恐る手を上げて頭をさわって見れば、何やら棒のようなものが手に当たった。
「……?なんですか、これは?」
「知らんのか。それはな、簪ってぇやつだよ。たった一本で長い髪でさえ纏められる便利なもんさ」
「……へぇ……」
簪、というもの事態は知っている。
未来でもたしかあったはずだ。
けれども、こんな棒見たいなものだとは思わなかったし、何よりこれ一本で髪を纏められるなんて。