夕焼け色に染まる頃
すごいなぁ、なんて思って高杉さんを見れば。
ポンと優しく頭に手が乗って視界がさえぎられた。
「店主。簪の代金、ここに置いとくからなぁ」
チャリンという、銭の音。
「おやおや、高杉さんなら別にタダで構わないってのに」
「そういう訳にはいかねぇだろうが。じゃあ、邪魔したな」
「いいえぇ。三日後、きっと着物も仕立て終えておきますよ」
店の奥からする店主さんの声。
それにはクスクスと小さな笑い声も交えていて、なんというか――……高杉さんとの会話が楽しそうだ。
慕っている、って言えばいいのかな。
そんな感じ。
「さぁて、朔」
「はい?」
店から出てすぐ。
一度立ち止まって私を見た高杉さんは小首を傾げた。
つられるようにして、私も小首を傾げる。
それを見た高杉さんはふ、と小さく笑って身を翻し歩き始めた。
「行きてぇところがある。ついてくるか、こないか」
「……は?」
「二択。俺的にゃあ、お前が着いて来ようと来まいとどっちでも良いんだよ。だからお前がお前自信で、ついてくるか来ないか決めろよ」
呉服屋の前。
どうでも良さげにあくびをする高杉さんを見て、私は瞬きをパチパチと二回した。
「いえ、あの、何処に行くおつもりで?」