夕焼け色に染まる頃
チラリと高杉さんが私を見た。そしてニヤ、と意味ありげに笑った後言ったのが、
「……秘密」
なんて言葉。
それがわからないと、私には判断のしようがないじゃない。
だったら、帰る道がわからない私には高杉さんに着いて行くしかない。
それをわかっていて、高杉さんは秘密なんて言ったんだろうか。
わかってないまま、意地悪で言ったんだとしても十分悪質だけれども、もしわかってて言ったんならそれよりも悪質。
悪質過ぎる。
…………私、ここまで歩いてくるのでも疲れちゃったのに。
「ついて、行きますよ……」
あんなに速く歩く高杉さんを見失わないで追うなんて、無理だと思うんだ。
「よし、じゃあ来いよ。連れてってやる」
「え、あ、」
そう思っていた矢先、驚いた。
高杉さんは私の心の中を見透かしたかのように――……私の手をとって歩き出した。
それも、いくらか歩く速度を落として、私にあわせてくれている。
……意外と。高杉さんが、人に親しまれる意味がわかった気がした。