夕焼け色に染まる頃
だって私は、学校からの帰り道……それも学校から一直線に続く道の途中で立ち止まって、夕焼けに見とれてて。
だからあっちを向けば、学校は見える筈なのに。
「おい、女。どうした、顔が真っ青だ」
そう声をかけられて高杉さんを見れば、やはり怪訝そうな顔。
……高杉、晋作……?
そうだ、そういえば高杉さん、着物を着てる。
「……あ、の」
やっとの事で声を絞り出す。
あぁどうか神様。
こんなあり得ない予想、外れていて下さい。
「なんだよ。俺からの質問に答えんの、か」
ひとつため息。
けれどもにぃっと笑えば、
「なんだ、答えてやる」
目を細めてそう言った。
「今は、……西暦何年ですか?」
心臓の音。
そして、さぁっと耳を吹く風が一瞬の静寂を表した。
時間が、この一瞬が長い。
―――――………「文久3年だ」
そして私は、膝から崩れ堕ちた。まるで力が抜けたかのように。